第60期王座戦五番勝負 第二局 ▲渡辺明王座 - △羽生善治二冠

後手勝ち。

この対局前までの対戦成績は渡辺20勝、羽生16勝で、ここから羽生が勝利数を逆転することはないだろう、と思う。通算成績でも今年度成績でも羽生の勝率が渡辺を圧倒している現状を踏まえても、若い方が瞬発的な処理速度で上回る分、有利かと。自分自身が羽生の年齢に近いせいもあって、羽生が渡辺に負ける姿に悲哀を感じてしまう。
今回3手目で羽生が飛車を振り角換わり四間飛車となった。まともに居飛車で戦ってはかなわないと認めたわけではないと思うが。こうして策を弄して負けたら・・、終盤は見てらんないことになるのではとも思った。王位戦で羽生が藤井をほぼ完封したように、渡辺が羽生を叩きのめすのではないかと。実際に羽生の作戦負けの気配が濃厚だったと思う。92<=>82の玉往復なんて恥ずかしいような。先手は1枚多い堅陣。後手は左翼の駒は遊んでしまっているし。
後手が一方的に崩されるわけにもいかず、何かすべく打開するとしたら端しかない。ただし端を突いたら自玉を危険晒す。でもこれが最終的にうまくいってしまうとは。細いどころか細切れしてるんじゃないかという攻めで、いつもの羽生らしさ、つまり駒と駒がいつのまにか連なって攻めが続いている、練りこんだ構想があったのかどうか。渡辺がちょっとしたミスをしたようで、星を取り戻した。

名局だったと思うけど、何かドロドロした執念のようなものがあった。羽生が背負ってきたものと、渡辺が既に背負ってきたもの、そしてこれから背負うべきものが、将棋盤に圧し掛かってきているようで、息が詰まった。
王位戦 羽生-藤井 第2局のようなスカッとした華麗な将棋も名局だが、第一人者同士のこんな将棋はなんとまあ、畏怖?畏敬?の念すらあった。