まだタイムシフトは見てないけど、豊島将之七段と菅井竜也五段がどちらか一方ではなくご両人登場とは。連盟、背水の陣ですかね。勝っても負けても、この(大人の事情を加味したうえで)実現可能な文句なしの布陣をやっちゃうと、もう5対5のフォーマットでは新味が出せなくて飽きられそう。

ともかく今回は勝ち負けはどうでもよくて。
もう棋士側は失うものはないわけだしソフトに勝っても得るものはないから、純粋にどんな棋譜が残せるかという点が注目なのでは。屋敷九段と上記2人についてはこの点期待通りになりそう。あとはサトシン(鬘)がウケ狙いでどんな滑り方をするか。森下卓九段はどうなのかなー。往年の力ではないしな。

マシンスペックの調整とかチェスクロック方式とか事前練習可とか、ソフト側の見た目の優位をどう削って人間側に寄せるかという点で既にソフトの方が強いって理解しているようなもので、もうソフト対プロ棋士の頂上決戦という構図ではないよね。人間側は精神的なものとか疲労や生理的現象など含む体調面とかで、ソフトよりも読みの深さや広さを下回る場面が当然出てくるから、そりゃー不利に決まってる。阿部光瑠四段のような長時間の研究の末の手順を再現するか、中盤でソフトが軽視して読みを切ったその先にある妙手でも発見できれば勝てるのかな。

出場ソフト見たらやっぱりGPS出ないのね。pona、ボナ、ツツカナ、習甦、YSSとかですか。クジラちゃんも出てるか。あとはよくわからない。

うへー、電王戦の未来が見えない。

10/3 第61期王座戦五番勝負第3局 ▲中村太地六段-△羽生善治三冠

中村太地六段が快勝。ただ寄せ方が慎重すぎる嫌いがあった。春〜初夏の絶好調から少し減速気味なところもあったり、4月の郷田戦の敗退なども含め大舞台でこその安心安全な道を選択したのだろうか。ここらへんの調子に応じた緩急を付けられるあたり、冷静だしスケールの大きさなんだろうな。2勝1敗で王手。次でスパっと決めるか。

日経本社ビルの大盤解説に行ってきた。18時開始なのでちょうど夕休のタイミング。解説は渡辺明竜王、聞き手は加藤桃子女流王座。
開始20分後に現場に到着。案内の表示はなく戸惑ったが日経ビルの感じのよい警備員さんが親切に教えてくれた。いやすごい混み方だった。そういえばタイトル戦の無料の大盤解説会は初めてだったがいつもこんなもの?
竜王の角換わりの解説が非常にわかりやすい。角換わりは手待ちとか仕掛けとか間合いの図り方が難しすぎるんですもの。ここで仕掛けるとダメ、という分かれを細かく説明してて勉強になった。ただ丁寧すぎて夕休中に次の一手クイズをやらないといけないので時間の制限がもどかしかった。とはいえ竜王も手慣れたもので、手の説明が細かくなったところで、カトモモさんに今後の女流王座戦(vs里見香奈)のことを振ってちょっとブレイクを入れたり。

次の一手クイズは夕休明けの一手。
当選者には、羽生、たいち、竜王のそれぞれの色紙10枚となかなかの数。

1 87歩成:指さないでしょうがとりあえずと竜王
2 65銀:攻め将棋の私としては、とカトモモさん。
3 その他

投票総数299票で、なるほどこんなにいたのかと会場が少し盛り上がった。
正解は 3 その他 だったわけですが210票以上も当たっていてもう偏りすぎ。解説陣信用なしと。
自分も正解してたけど、おおむね7分の1かー。当たるかもなーと思っていたが、自分の周りにいた人が3人もあたっていながら、外れた。
色紙の文字は、羽生「玲瓏」、たいち「木鶏」、竜王はわからなかった。

木鶏

荘子は道に則した人物の隠喩として木鶏を描いており、真人(道を体得した人物)は他者に惑わされること無く、鎮座しているだけで衆人の範となるとしている。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%A8%E9%B7%84

第61期王座戦五番勝負第2局 ▲羽生善治王座-△中村太地六段

矢倉vs雁木に。先手が攻めて後手は専守防衛。ただ先手の攻めが細い。

102手目△14玉から安寧の地を目指す後手玉の長い旅。それから2時間超も指したのか。
132手目△15玉とやっと一歩進む。
148手目△27玉で初入玉
170手目△36玉と押し返されて、5段目まで対局。
もう一度36に戻ってきたものの、ここで討死。
203手▲27銀までの即詰みでした。

終局後、モテミツ先生@ニコ生の髪がボッサボサでした。自分の対局みたいに。2年連続王座戦から名局賞なんだろうか。

途中、先手に勝ち筋や後手に入玉できる筋があったかもだけど、それを詮索するのも無粋なのかもと思いつつ、綾さんのただ捨ての▲27歩〜▲29香(本譜は単に29香)はどうだったのかな。感想戦で検討してたらいいな。

それにしてもほどよく仕事が遅くなってよかった。これ夕休明けから見てたら疲れて寝てた。

9/12 順位戦A級 深浦康市九段-久保利明九段

86手目△19と。長い終盤戦、緊張の糸がピンと張った局面で1手1手が重たい。ここで気の抜けたような、でもいかにも妙手な1手が大きかったようだ。ねじり合いになったときにはトンデモナイ手をひねりだすよなぁ。132手で久保勝利、どちらも1勝2敗に。

9/13 順位戦A級 郷田真隆九段-佐藤康光九段

かっちりと相矢倉。61手目▲57桂。先手ペースに持って行った。こちらも両者1勝2敗。

9/9 月曜日から豪華な3本立て。

棋王戦挑決トーナメント 2回戦 ▲佐藤康光九段-△糸谷哲郎六段

角道あけて4手目△32銀は1回戦で深浦康市九段を破った戦法。棋譜コメにもあるようにモテミツはこれ誘った。でも本譜は向かい飛車にはせず、早めの△31金は角交換振り飛車みたい。角が謎の回り道とか中飛車に振って玉角飛のお団子ができたりとか、糸谷氏でなければ完全な構想ミスなんだろうけど、やっぱりそうだったみたいで。まとめられずに惨敗。逆にタイプは違うけど変態将棋仲間のモテミツだからこそ打ち破ったのかもしれない。

A級順位戦 3回戦 ▲三浦弘行九段-△羽生善治三冠

角換わりで先手は穴熊に。39手目▲66歩に昼休憩前から71分の長考で羽生が△65歩と仕掛ける。しかも味付けは薄味に42手目△65同桂とふんわりしすぎにも。飛車先突いて持ち駒から角を投入して先手飛車を隅に追ってから▲87歩を垂らし、さらに飛車をいじめて、金の連携も剥がして十分に下味をつけてから、68手目▲86飛の特攻。いつここまで読んでたのかわからないけどこれ昼休を挟んだ長考の中に含まれてたら驚きだけどな。これでほぼ決まってしまった。82手で三浦投了。みうみう先手番生かせなかった。羽生3連勝。

竜王戦 挑戦者決定三番勝負 ▲森内俊之名人-△郷田真隆九段

相矢倉、46銀37桂。59手目▲49飛車と引く。この手待ちが後手を乱れを誘ったようで展開が早くなった。森内名人完勝譜だろう。今年の名人は手がよく見えてるとか威風堂々としているというか、懐の深い一手で流れを引き寄せるところがある。竜王戦は2日制の王者を決める戦いですな。10連覇を阻むのかどうか。王座戦が霞んでしまう。

郷田九段は棋聖戦王座戦に続き挑決で敗れること本年3回目。3回続けばそれが実力なんだろうけど、いかにも運がなさすぎる。

第61期王座戦五番勝負第1局 ▲中村太地六段-△羽生善治王座

と金5枚でグラビア男・太地の先手に。羽生の一手損角換わり。

  • 後手は飛車をあっさり捌いちゃえば気楽だったか。変に粘って遊んでしまった。そして龍は3筋のバリケードに阻まれてこれまた遊んでしまった。まあ終盤を長引かせる役目は果たしたが。
  • 佐藤康光九段を始めとする解説陣の予想はポイントポイントで外れるが、感想戦の様子では悪い手ではなかったようで、羽生の読みが少し冴えなかった部分もあったか。
  • 攻めすぎ将棋がモットーの太地の終盤は特に鋭くて相手が一呼吸も出来ないまま切り裂いてしまうもんだけど、今回は終盤が実に長かった。自陣の安全を確保できているだけに攻めに専念できたものの、後手陣が狭いが堅い。持ち駒も十分になっているのに、なかなか刺さらない。見た目以上に苦しい勝利だった。
  • これだけの勝率の若手(もう中堅の入り口?)だから、確率的にいい加減1勝しないとおかしい。しかも先手だし。これ負けてたらデビュー当初の福永祐一が重賞で勝ち切れないみたいに、いまいちさんに陥りそうだった。

A級順位戦 3回戦 ▲行方尚史八段-△渡辺明竜王
ナメ氏がGPS新手風の仕掛け。でも構想ミスがあったようで、竜王の圧勝。19時44分に早々に終局。感想戦も10分程度とナメ氏、不本意

第63期王将戦二次予選 ▲郷田真隆九段-△菅井竜也五段
菅井ゴキ中を郷田超速37銀で打ち破る。ゴキ中も菅井だから勝ててたけど、もう本当にオワコンなのかも。相手次第では通用なんでしょうが。

電王戦2.1 タッグマッチ

電王戦2.1 タッグマッチを現地観戦してきた。ネットで観戦するのと何が違う?足の疲れが違うくらい?
観戦の当選通知メールに、無料イベントなんで来ない奴いるじゃん?だから多めに出してるし、そもそも席は全員に用意してないよ?(意訳)とあったので文句は言えないが、ええ、立ち見でしたよ。正味10時間以上の企画だからなー。矢内さんとか森内名人も立ちっぱで楽な姿勢も取りづらかったろうし、出演者・観客の疲労をもう少し考えてほしかった。
あと写真撮影は可だったのか不可だったのか不明。多くの観客が撮影してたが、第3局くらいのとき?にスタッフが「撮影はプレスだけ」と1人の観客を注意していた(別にマナー違反な撮影をしてたわけじゃないよ)。その後も周囲は普通に撮影してたし。よくわからないので写真は載せない。

出場者は、コール習甦、佐藤pona、船江ツツカナ、塚田puella、三浦GPS。先後固定の変則トーナメントの抽選が最初に行われ、船江ペアが1番クジを引いて1回勝てば決勝かつ先手番。5番クジのコールが当然一番つらい枠で決勝まで2回で初戦は後手。
優勝したサトシン(渋)は同じく決勝まで2回、ただしすべて先手番と。決勝戦以外は1時間切れ負け。決勝戦のみは持ち時間1時間、切れたら1手30秒未満。

第1局はその▲サトシンpona vs △コール習甦。序盤からコールは習甦竹内氏とキャッキャウフフと相談将棋。一方のサトシンは序中盤から山本ポナと相談を始めた。タイミングは忘れたが、現局面の分析だけでなくおそらく双方とも?数手先を入力させて分析をさせていたのが印象的だった。これぞAdvanced Shogiですな。
第2回電王戦を思わせる習甦の無理攻めはやはり切れてしまい、このまま終わるかに見えたら粘りの手順に突入して、最終盤は読み手藤田綾を泣かせる超光速の相入玉にもつれ込む。最後は時間が切れたのかと思ったが、コールが残り8秒で投了していたようだ。現地だと持ち時間が表示されなくて、よくわからなかった。
コールは習甦を頼りすぎてしまったようで。△73桂前後の構想がどうだったか。本譜はサトシンponaペアがうまくやったというよりは習甦の自滅に近かったかも。

第2局は優勝候補同士、▲船江ツツカナvs△三浦GPS。局後のコメントによると事前に船江ponaタッグで普段VSをする棋士と練習していてタッグ側が強かったと。ただ終盤カチカチ(PCを)叩くと相手がビビってしまうという効果もあったようだがw 普通に考えてそりゃ人間1人よりは強いよな。
船江が先週王将戦で出したばかりの横歩取りの最新型らしい。いきなり飛車をぶつけて交換させるという激しい手順。本局を想定してというわけでもないだろうが三浦は確認済みだった。解説となったコールは横歩は苦手で"わからない"を連発。局後に両対局者もわからないを連発していたのだから仕方ない。
タッグマッチの見所としては一手の選択を「棋士がソフトの評価値をもとに候補手を採用する」「ソフトの候補手に味付けをして採用する」「候補手を信じない(棋士の構想を生かす。あるいはハードの性能や時間的な問題からソフトが探索しきれない場面での人間判断)」のいずれで進める点があったと思うが、変化が多すぎで難しすぎだったこともあり、棋士がソフトの評価も自分の評価も信じられないというのは想定してなかった。
将棋としては面白かったがタッグマッチとしては微妙な戦型選択だったかもしれない。三浦が勝利。
あと受けのGPS推奨△53桂について船江は棋士でこれ指すのは頭おかしいと思うと言っていたら、これコールの候補手だったw コールわからん連発のうえに頭おかしいんじゃね発言、しかも負けた後の解説とふんだり蹴ったり。でもコールくんはいじられキャラなのでこれでいい。
結果玉の行き場も狭めて効いていたし変な手じゃなかったようで。人間は香車がわかりやすいけど。

第3局、サトシンpona vs 塚田Puella。足が疲れて横歩なのを確認してから抜けちゃった。puella α側だけGUIが将棋所でなく難解そうな画面でした。入力もテキスト直っぽかった?伊藤電王間違えたっぽくが貞升に棋譜確認してたり。おちゃめな一面。しかしこの方、なんて見事な"不敵な笑み"ができるんだろ。

そして決勝。▲サトシンpona vs △三浦GPS。ゼロ手損角換わり相腰掛銀から▲45銀とぶつけて忙しい流れに。42手目付近でここ面白かったが森内名人がponanzaの読み筋に驚きの声。後手の壁型を突いてハメ手のような手順で一気に追い込む筋が紹介された。そう単純な筋にはいかないとは思うけど、後手の飛車を追い込む変化なども含め森内名人が意外にも後で調べる価値があるぞと思っていそうな雰囲気を感じた(全体を通して森内名人が先入観や偏見なくソフトの読み筋への分析や評価をしていたように。来年の名人戦にソフト新手を繰り出すかも)。
その後、後手の馬が先手玉を直射して攻めがつながりそう。これは後手優勢、評価値もその評価。ところがサトシンがドラマをつくりだした。ようやくとばかりに成銀を寄った場面はまだまだ窮地という印象も83手目▲38金打が根性の一手で後手の龍が閉じ込められた。その後の交戦で後手は攻略の足場を失って馬だけが頼り。そして▲56歩が受けの妙手。名人も58歩でなく一度受ける意味なんなんすかねと言っていたが、結果的に55の空間を開けたことで後の寄せにも好影響を。既にサトシンは秒読みなのでマシンスペック的にソフトの評価は信じられない局面。自分で指していたら妙手連発。やっぱサトシンは年齢制限ギリギリで四段なったり歴史上初のソフトに負けた現役棋士なったり劇的な人生を歩む運命にあるのかも(ただ影の部分、通な部分で劇的な。タッグマッチ優勝というのも地味だし)。
奇跡的な大逆転、サトシンの数奇な人生を思うに神妙な気持ちになった。

全体的な所感として。

  • 局面の深刻さ、持ち時間に対する適切な考慮時間に比して十分な探索局面数は確保できたか、プロ棋士が参考にできるレベルにあったか。高スペックPCだったようだけどそれでも十分なものだったか。いやあんまりスペック高いと人間が指す意味がないか。こんな感じでよかったのかも。(ふなえもん曰く3番手くらいの候補手がアマ初段のようなレベル)
  • 棋士の決断の遅さによりソフトの検討時間が削られていなかったか。(ソフトの終盤力を生かせなかったように)
  • 人間がソフトの判断を採用するのは序盤中盤終盤のどこがいいのか。たぶん仕掛けのところからかな。
  • 込み入った局面で、ある一手を棋士とソフトのどちらかが指したかはもはや峻別不可能。たぶん棋士の場合は、直感で選定した数手をもとにソフトの判断とぶつけていく、ただしソフトが読んでない場合や局面を入力して分析する、またはソフトが検索中止したその先まで分析させていく、という使い方だったと思うが、これは共同作業だからどっちがどうとは言えない。
  • Advanced Shogiは本腰入れていく対戦フォーマットだと思う。連盟がどう進めていくか。進める場合レギュレーションの設定がかなり難しいかと。
  • 森内名人ってこんな面白い人だったっけ?オープニングでボソボソしてた時には声張れ!って思ってたけど、ソフトとの関わり含め森内名人を解説に選んだ企画側の好手でしたね。
  • 私たちは矢内さんに頼りすぎではないだろうか。

wikipedia:Advanced_Chess(http://en.wikipedia.org/wiki/Advanced_Chess)によると、1時間切れ負けは一般的なルールのようで。あとメリットとして、
"giving the viewing audience a remarkable insight into the thought processes of strong human chess players and strong chess computers, and the combination thereof."
(強い棋士、強いソフト、またその両者の連携をもとにした思考過程の中にある卓越した読み筋を観客に示すこと)
とあった。ソフトの純粋な読み筋や、棋士が何を読ませていたかを公開して欲しかったな。
次回への課題ということで。

それにしても『電王戦のすべて』が既視感のある内容で物足りなかったところに、『ドキュメント電王戦』ともう1冊の関連本が出版されるとか。勘弁してくれと。ポチっとしてしまった。